定点観測

岡山市のまちなかも桜満開

まだまだ自由で大らかな交流がはばかられる状況には変わりないが,満開の桜は晴れやかな気分にさせてくれる.

植物がもつ力は実に大きい.森の中で感じるリラックスした気分や清々しさは多くの人が経験したことがあるだろう.心身ともに落ち着いた状態で出現する脳波であるα波が,植木鉢の植物を見たり,森林の中にいることで多く出ることは多くの研究が証明している.

植物を育てることに苦手意識をもつ私でも,春を感じさせてくれる花々は好きだ.

この時期は卒業や新学年と重なるので,花からの視覚的・嗅覚的な刺激だけでなく,感情的・意味的な刺激もあるだろうと思うが,気分はポジティブになる.

こうした春めく気分になるたびに,「スポーツは,花と同じくらい人をポジティブにしているだろうか?」と考える.

桜をみて陰鬱な気分になる人に出会ったら,「さみしいことだな」と思うだろう.

それと同じように,スポーツをすることにイヤな気分になる人に出会ったら,どうだろう.「そういう人もいるよね」と思えてしまうのだとしたら,スポーツは花ほどの価値を生み出せていないということかもしれない.

しかし,花は(お世話をしている人たちはいるけれど)自然に咲くもので,スポーツは人が創るものだ.

人の手が加わることでポジティブな価値が小さくなっているとしたら,まだまだ工夫や努力の余地があるということだろう.

自然には勝てないが,満開の桜のようなスポーツを生み出したいものだ.

髙岡 敦史

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髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。